かつて大阪に入江塾という伝説の塾がありました。
あの灘高校に55人定員のところ30人合格したことがありました。
きっと、アタマのいい子だけが集まる塾なんだなとお感じになったと思います。
そう、成績でいうと素晴らしい成績の子達がたくさんいたのでしょう。
その入江先生が、生徒には「青信号の子」と「黄信号の子」がいるとおっしゃっていたのを入江塾に在籍していた方からお聞きしたことがあります。
「青信号の子」は、なんでも楽しんで、直感と天才で乗り切っていく子。
きっと勉強だけでなくすべてがそんな感じの子。
ごく少数でしょう。
これに対して、圧倒的多数の「黄信号の子」は、
青信号の子が渡った後に「気をつけてね」と
声を掛けられながら小走りに渡っていく子。
入江塾は黄信号の子を大切にする塾を目指していました。
しかし、
毎回「気をつけてね」では、言う方も、言われる方もいやになってしまいます。
なので、ふだんの指導に大きな特徴がありました。
難関高に合格者多数なので、
黒板をバンバンたたく熱血指導かと思われがちですが、
授業らしい授業はほとんどなく、
生徒は決められた教材を独力に近い形で取り組んで行きます。
考えても、考えても、正解にならない。
なぜか分からない。
でも考えてみる…
それでも解けないので、やっと教えてもらう。
ああ、と視界が開ける。
それだけしっかり考えてきたから、
今まで何がダメだったのかが鮮やかに見えてくる。
成長した実感と充実感。
楽しいと感じ、それが次へのエネルギーになる。
素晴らしい試行錯誤の場を塾が与えていました。
そして、青信号で渡れる回数も増えていく。
50年近く前の話なので時代背景が違うとお感じになると思います。
しかし、本質は、むしろ現在に求められているものだと考えます。
黄信号の子が繰り返した「過程」はその子のものの考え方の基本となります。
数々の試行錯誤の中に必ず解決の種があるという考え方。
これからの自主性が求められる社会に身を置くのなら、
ますます黄信号の子の「生きる力」が大切になります。
まじめで集中力がある。
指示されたことは、一生懸命やろうとする。
そんな黄信号の子の強みを伸ばしてやる塾。
それには、早いスタートと余裕を持った時間の中で、
ふだんからの「試行錯誤」が大切です。
コツコツと繰り返す「試行錯誤」を大人たちがみまもり続けることの大切さ。
学年末対策に黙々と取り組む生徒さんをみまもりながら、
そんなことを考えていました。